NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

死刑廃止についての議論を開始し、死刑執行の停止を求める緊急アピール

声明・意見書

いま、日本の社会では、かつてないほど死刑をめぐる議論が盛んになっています。
千葉景子法務大臣(当時)による死刑執行と、それに続く東京拘置所の刑場公開は、世界の耳目を集めました。裁判員裁判における死刑判決はいずれもマスコミで大きく取り上げられてきました。とりわけ、絞首刑の残虐性が正面から問われた事件は、市民が初めて死刑の合憲性判断に関与した事案として注目を浴び、同事件を契機として、朝日新聞(11月4日付)、西日本新聞(11月11日付)、信濃毎日新聞(11月2日付)、愛媛新聞(11月3日付)、茨城新聞(11月13日付)等の社説でも取り上げられるなど、死刑制度の是非に関する議論の開始を求める声が高まりました。足利事件・布川事件と、相次ぐ無期刑受刑者に対する再審無罪判決は、過去の死刑判決に対する疑問をも生み出しています。さらに、オウム真理教関連事件で起訴された13名の元教団幹部らに対する死刑判決の確定を受け、今後の死刑執行の是非をめぐっては、様々な意見が飛び交っています。

2011年の終わりを目前に控えた現在、死刑の執行が準備されているといわれています。しかし、果たしてそれでよいのでしょうか。死刑制度をめぐっては、長い間、内外から様々な問題点が指摘されてきました。それらの一端が、今日、ようやく人々の目に触れ、問題意識が芽生えるまでになってきたのです。こうした状況において、私たちの社会が選択すべきなのは、死刑の執行を急ぐことではありません。今こそ、国会において、死刑制度に関する徹底した議論と調査が開始されるべき時です。そして、冷静に議論・調査を行う環境を確保するため、少なくとも議論が行われている間、死刑の執行は停止される必要があります。死刑は、人間の生命を奪う究極の刑罰です。政治における党派の利害対立を超え、真摯かつ冷静な議論がすみやかに開始されることを、求めます。

2011年12月13日

雨宮 処凛(作家)
池田 香代子(翻訳家)
池田 浩士(京都大学名誉教授)
太田 昌国(評論家)
香山 リカ(精神科医)
川村 湊(文芸評論家)
木谷 明(元裁判官、法政大学教授)
坂上 香(津田塾大学教員、ドキュメンタリー映像作家)
新谷 のり子(歌手)
田口 真義(裁判員経験者)
土井 香苗(ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)
中山 千夏(作家)
森 達也(映画監督、作家)
(50音順)
※この緊急アピールの取りまとめは、アムネスティ・インターナショナル日本、死刑廃止条約の批准を求めるフォーラム90のご協力を得て、監獄人権センターが担いました。

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