NPO法人監獄人権センター

LETTER手紙相談・今月の一通

今月の1通

「忘れられる権利」をめぐって

私には息子、娘が居ります。事件当時はまだ子供だったから問題がなかったでしょうが、今はもう皆、思春期も過ぎ、ネット検索など簡単でしょう。親の事件を知った時の子供達の顔とその動揺を思う時、心が痛みます。

然し、こればかりはどうしようもないのです。タイムマシンでもない限り、元に戻す事は出来ないのですから。
私としては、この先起こる事全てを受け入れることしかできないのだ、と諦めております。例え子供達の幸せに支障が出来たとしても、私にはどうしてやることも出来ないのですから。

過去の手紙相談より

「診察を希望しても医師の診察をなかなか受けられない」

手紙の要旨

腰痛で医師の診察を受けたいのですが、診察希望を受け付けるために巡回してくる「看護助手」が「しばらく様子を見ろ」と言うばかりで、医師にとりついでもらえません。どうしたら医師の診察を受けられるでしょうか?

CPRからの返事

医療については「所長への苦情の申出」くらいしか不服申立ての方法がなく、決め手となるような解決策はありません。保健助手に粘り強く症状を訴え、それでもダメなら「所長への苦情の申出」や視察委員会への投書をして下さい。

刑務所の医療問題について

刑事施設の医療をめぐっては深刻な問題点がいくつかありますが、本件のような「看護助手」による「前さばき」もその一つです。「看護助手」とは准看護師資格を持つ刑務官で、彼らの「前さばき」によって医師の診察をなかなか受けられないことが、ほとんどの刑事施設で常態化しています。

その背景には刑務所の医師不足、詐病を疑う刑務所側の体質、看護助手も医療スタッフである前に刑務官であることがあります。確かに、刑事施設で診察希望が多いのは事実で、その中には不要不急の診察希望もないとは言えないでしょう。

しかし、詐病を疑っていたら切りがありません。医師法や刑事被収容者処遇法の規定を持ち出すまでもなく、診察の希望があれば医師が診察することが原則でなければなりません。

医療をめぐっては、この他に、刑事施設に勤務する医師の絶対的な不足、医療の保安への従属(警備上の都合で外部の専門医の診療をなかなか受けさせない等)、医師自身が医師ではなく刑務官として患者に接してしまう場合があること、受刑者には健康保険の被保険者資格がないので高度の診療を自費で受けることができないこと等の問題があります。

このように問題が山積する刑務所医療の改革の方向として、監獄人権センターでは刑務所医療の所管を法務省から厚生労働省に移管し、刑務所医療を地域医療に組み込むことを以前から提言しています。

医師は診療の求めたある場合には「正当な事由がなければ、これを拒んではならない」(医師法19条1項)ことになっており、刑事施設の長は、被収容者が「負傷し、若しくは疾病にかかっているとき、又はこれらの疑いがあるとき」は、「刑事施設の職員である医師(…中略…)による診療(…中略…)を行い、その他必要な医療上の措置を執るものとする」(刑事被収容者処遇法62条1項)となっています。

個々の医療措置については医師の専門的な判断がからむので、「~薬を出せ」とか「~手術をせよ」と具体的な医療措置を要求する権利は、被収容者に認られていませんし、認めさせることは困難です。しかし、少なくとも「医師のよる診療を行え」と要求する権利は上記の刑事被収容者処遇法62条1項によって被収容者にも認められていると言ってよいでしょう。この点を主張して「医師が診察する」ことまでは強い態度で交渉してよいし、施設側もいつまでも拒み続けることはできないと思われます。

なお、その後の具体的な医療措置について問題がある場合には、家族が外から施設側と交渉するのも効果があります。また資金に余裕があるなら、弁護士を立てて交渉するも有力な手段で、これによって解決した事例は少なくありません。

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