NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

谷垣法務大臣による死刑執行に抗議する

声明・意見書

2014年8月29日
NPO法人監獄人権センター

谷垣禎一法務大臣は,本日(8月29日),小林光弘氏(仙台拘置支所,56歳),高見沢勤氏(東京拘置所,59歳)に対し,死刑を執行した。今回の執行は,2014年に入ってからは2回目,第二次安倍政権において,谷垣法務大臣の命令により執行された人の数は11名に達した。

小林氏は,消費者金融支店に放火し5人を殺害したとして青森地方裁判所で死刑判決を受け,2007年3月27日,上告棄却により死刑判決が確定した。小林氏は第一審から殺意を争い,確定後も三度にわたり再審請求を行っていた。本年8月6日に第3次再審請求が棄却され,弁護人が第4次再審請求の準備をしていたさなかの執行であった。

高見沢氏は,配下の暴力団組員らと共謀し合計3名を殺害したとして前橋地方裁判所で死刑判決を受け,2012年10月23日,上告棄却により死刑判決が確定した。高見沢氏は,被害者3名のうち2名については殺害の共謀を否認し,また1名については正当防衛ないし誤想防衛を主張し,いずれの殺人についても無罪を主張していた。

去る7月24日,国連の規約人権委員会は,第6回日本政府報告書審査の総括所見において,死刑の廃止を十分に考慮すること,死刑確定者とその家族に対し予定されている死刑執行の日を予め合理的な余裕をもって告知することなどを,日本政府に勧告していた。仮に,本日の執行予定が2名の死刑確定者に告知されていれば,彼らは間違いなく,再審請求をはじめとする適法な手続に訴えていたであろう。しかし谷垣法務大臣は,勧告をまったく顧慮することなく,しかも,9月3日に予定されている内閣改造による退任間際に,敢えて2名の執行を命じたのである。そこには,人の生命に対する尊重はもちろんのこと,死刑に直面する人に対する手続的保障という観念も看取できない。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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