NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

上川法務大臣による死刑執行に抗議する

声明・意見書

2017年12月19日
NPO法人監獄人権センター

上川陽子法務大臣は,本日(12月19日)関光彦氏,松井喜代司氏(いずれも東京拘置所)に対し,死刑を執行した。今回の執行は,今年8月の上川法務大臣再任後初であるが,上川大臣としては2015年6月25日の神田司氏(名古屋拘置所)に対する死刑執行に続き二度目である。第二次安倍政権以降に死刑が執行された人の数は21人となった。

関,松井両氏とも,現在,弁護人を選任したうえで再審請求中であった。これまでの慣例を無視し,再審請求中に死刑執行を行ったことは,きわめて問題である。死刑判決確定後に再審請求で無罪判決が確定した免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件はいずれも,複数回の再審請求を行った結果,裁判所の厳正な判断により無罪判決が下されたものである。また,袴田事件では第二次再審請求で再審開始が決定し,袴田巌さんが2014年に釈放されている。これらの例を見ても,原判決に誤りがある可能性はいかなる場合でも否定できず,被告人自身が犯行を否認または判決の誤りを主張している事件については,より慎重な審理が行われるべきである。

さらに関氏は,犯行時19歳であった。20歳未満を少年とする我が国の法制度においては,犯罪時18歳未満の少年に対して死刑を科さないという現行の少年法(第51条1項)にとどまらず,1994年に我が国で発効した子どもの権利条約第6条が少年の生命に対する固有の権利及び成長発達権を保障していること、及び同条約で引用されている少年司法運営に関する国連最低基準規則(いわゆる北京ルールズ)の趣旨が最大限に考慮されなければならない。すなわち北京ルールズ第2条2(a)では、少年を年齢で区別することなく、「少年とは、各国の法律制度の下において、犯罪について成人とは違った仕方で取り扱われている児童又は若者をいう」とした上で、同規則第17条2では「死刑は少年が行ったいかなる犯罪についても科してはならない」と規定している。したがって,科刑のみならず死刑執行の判断にあたっても,「少年」に対しては,成人の場合よりもさらに慎重な判断が求められるというべきである。

日本政府は,死刑制度をめぐる上記を含めた数々の問題点を直視し,制度の廃止をも視野にいれ,直ちに死刑制度自体の見直しを行うべきである。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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