2021年12月21日
NPO法人監獄人権センター
代表 海渡雄一
事務局長 大野鉄平
日本冤罪・死刑情報センター
代表 Michael H. Fox
本日、古川禎久法務大臣の命令により、小野川光紀氏、高根沢智明氏(ともに東京拘置所)、藤城康孝氏(大阪拘置所)に対する死刑が執行された。監獄人権センターと日本冤罪・死刑情報センターは、この死刑執行に強く抗議する。
本日の死刑執行は、2019年12月26日(森雅子法務大臣)以来、2年ぶりである。岸田文雄自民党総裁が首相に指名され、本年10月に発足したばかりの岸田政権において、同じく10月に就任したばかりの古川禎久法務大臣による初の執行であるが、死刑制度が人権問題であることを否定するこれまでの政権の姿勢を岸田政権が引き継いでいることを如実に示すものである。
本年は、3月に国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が、7月・8月には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、日本に対して世界各国からの注目が特に集まった年である。
京都コングレスで採択された成果文書「京都宣言」では、「更生と社会復帰を通じた再犯防止」、具体的には「加害者の社会復帰を促進するためにコミュニティにおける更生環境を推進する」事が宣言されている。
死刑制度は言うまでもなく、加害者の更生と社会復帰の可能性を奪うものであり、死刑の執行は「京都宣言」の理念に反している。
さらに「京都宣言」では、「社会における脆弱な人々を含む全ての人に,その地位にかかわらず,平等な司法へのアクセスと法の適用を確保する」ことを、法の支配の推進の目標として掲げている。
本日執行された三名のうち、小野川光紀氏は再審請求中であったとされており、今回の死刑執行によって、平等な司法へのアクセスの機会を奪われた事となる。
国連の自由権規約委員会をはじめとする条約機関も日本政府に対し、再審請求中の執行を行わないよう繰り返し勧告してきた。
国連加盟国および国際社会による京都宣言の実施に向けて、リーダーシップを発揮する立場であるはずの日本政府による本日の死刑執行は、国際社会からの信頼を失う事にも繋がりかねない問題である。
ならびに古川大臣は、本日の死刑執行後の臨時記者会見において、死刑の存廃に関しては法務省が用意した資料を繰り返し読み上げる形で「各国において独自に決定するべき問題」と述べたが、本年3月の京都コングレス、7月・8月の東京オリンピック・パラリンピックといった世界的イベントの終了を待ってからの死刑執行は、国際社会からの批判を意識し、これを避けるためであることは明らかであり、日本国として独自に判断することの難しさを、大臣自身が表明している。
アメリカではバイデン政権によって、連邦レベルでの死刑の執行は停止されている。日本政府による死刑執行は、死刑廃止に向かう世界的な潮流に対して真正面から挑戦したものと捉えるべきだろう。
我々は、度重なる死刑執行にも決して屈せず、これまで以上に国際社会と連帯し、日本政府・法務省に対して死刑の執行の停止と死刑廃止に向けた具体的な検討を直ちに開始するよう粘り強く求めていくことを改めて決意する。
以上
English statement(PDF)
https://prisonersrights.org/cpr-cms/wp-content/uploads/2021/12/ProtestAgainstExecutions20211221.pdf