NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

死刑の執行を停止し、死刑廃止に向けた議論を求める共同要請書

声明・意見書

法務大臣 平岡秀夫 様

私たちは日本政府に対し、死刑の執行を正式に停止し、死刑制度に関する情報公開をさらに進めると共に、死刑廃止に向けた公の議論を進めるよう要請いたします。

平岡法務大臣は9月2日の就任記者会見において、死刑執行について「大変厳しい刑罰であり、慎重な態度で臨むのは当然」との姿勢を示され、「国際社会の廃止の流れや、必要だという国民感情を検討して考えていく。考えている間は当然判断できないと思う」と述べて当面執行しないとの認識を示された、と報道されています。

私たち死刑の廃止を求める個人および団体は、死刑の執行に慎重な姿勢を示し、国際的な死刑廃止の動向を踏まえて日本の死刑制度について社会全体で検討していきたいという大臣の姿勢に、賛同の意を表明いたします。

日本政府は、8月30日に「江田五月法務大臣の死刑執行命令書への署名拒否に関する質問主意書」に対する答弁書を閣議決定しました。この答弁書において政府は、刑事訴訟法475条2項の規定について、同規定は訓示規定であり、死刑という人の生命を絶つ極めて重大な刑罰の執行に関することであるため、その執行に慎重を期し、判決確定の日から六カ月以内に死刑執行命令がなされなくとも違法ではなく、職務怠慢や憲法違反にはあたらない、という旨の答弁を行っています。

そもそも日本政府はこれまで、国際社会から死刑の執行をただちに停止し、死刑制度の廃止に踏み出すよう繰り返し勧告を受けています。特に、2007年、2008年、2010年の3回にわたって、死刑存置国に対して死刑の執行を停止するよう求める決議が、国連総会で100カ国以上という多数の賛成を得て採択されています。

また国連の自由権規約委員会は、日本政府に対し、「人権の保障と人権の基準は世論調査によって決定されるものではないということを強調する」(1998年)と指摘し、「世論調査の結果にかかわらず、死刑の廃止を前向きに検討し、(中略)国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである」(2008年)と、世論をリードする形で死刑廃止への一歩を踏み出すよう明確に勧告しています。

近年では、志布志事件や足利事件、そして布川事件など、相次いで冤罪事件が明らかになり、代用監獄や捜査取調べ中の自白強要など、日本の刑事司法における人権侵害が多数報告されています。福岡事件や菊池事件、飯塚事件、さらに冤罪を主張しながら獄中死させられた帝銀事件や三崎事件など、死後再審の請求もいくつも申し立てられています。また、国連の人権機関からは、深刻な精神障がいを持った死刑囚の処刑など、国際的な人権基準に違反した処刑の危険性についても、繰り返し懸念が示されています。

まさに今、死刑制度を含む日本の刑事司法制度全体の抜本的な見直しが求められているのです。こうした観点から考えれば、死刑の執行に慎重を期するだけでなく、死刑の執行を正式に停止し、死刑制度に関する情報公開をさらに進めると共に死刑廃止についての公の議論を進めていくことこそ、人権擁護が任務である法務大臣としての職責を果たすことであると私たちは考えます。

近年、全世界で死刑を執行する国は、毎年20カ国前後にとどまっています。すでに世界の7割以上の国ぐにが死刑を廃止しており、死刑廃止の動きは、欧州諸国だけでなく、ラテンアメリカや中央アジア、アフリカ諸国にも浸透しています。東アジアにおいても、韓国が今年9月8日に死刑執行停止5000日を迎え、モンゴルでは2010年に死刑執行の停止を正式に宣言しています。中国をはじめ死刑を強固に支持する国々の中にも、死刑制度の運用を国際人権基準に沿ったものにしようとする肯定的な変化が見られます。

いま世界は、重大な犯罪に対し、罪を犯した人の更生に重点を置いた行刑制度や犯罪被害者支援の充実、あるいは貧困や差別問題に取り組む社会政策などによって対応しようとしています。人間の最も基本的な権利である生きる権利を奪う死刑という制度は、人権を保障すべき現代の刑事司法にあっては、存在してはならないものです。日本政府には、最大限の努力を払って、死刑に頼らない刑事司法制度を構築すべき国際的な義務があります。

私たちは、日本政府に対し、ただちに死刑執行を正式に停止するよう強く要請いたします。そして、法務省内に現在設けられている「死刑の在り方についての勉強会」をさらに発展させ、犯罪被害者遺族や再審で無実が判明した元死刑囚、弁護士、宗教者などを勉強会に招くなど、死刑制度に関する議論をさらに深めていくよう要請いたします。そして、死刑制度についての議論を国会や社会全体に広げる方向で、この勉強会を強化し、死刑廃止に向けた公的な議論を進めていくよう求めます。

2011年10月5日

死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
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