NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

小川敏夫法務大臣による死刑執行に抗議する

声明・意見書

2012年3月29日

小川敏夫法務大臣による死刑執行に抗議する

NPO法人監獄人権センター
代表 村 井 敏 邦
事務局長 田鎖麻衣子

野田内閣の小川敏夫法相は本日(3月29日)、古澤友幸さん(東京拘置所)、上部康明さん(広島拘置所)、松田康敏さん(福岡拘置所)の3名に対し、死刑を執行した。今回の執行は小川法相が2012年1月に就任して以来、初めての死刑執行で、民主党政権下では2010年7月28日の千葉元法務大臣による死刑執行以来、1年8カ月振り2度目の執行となった。

政権党である民主党はその「政策インデックス2009」において、次のように掲げている。「死刑存廃の国民的議論を行うとともに、終身刑を検討、仮釈放制度の客観化・透明化をはかります。死刑制度については、死刑存置国が先進国中では日本と米国のみであり、EUの加盟条件に死刑廃止があがっているなどの国際的な動向にも注視しながら死刑の存廃問題だけでなく当面の執行停止や死刑の告知、執行方法などをも含めて国会内外で幅広く議論を継続していきます。」

その後、2011年10月、衆議院内閣委員会において、藤村修官房長官は、平岡秀夫前法相が死刑執行に慎重姿勢を示していることに関し、「野田内閣において死刑を廃止する方針はまったくない」と表明し、平岡大臣にかわり2012年1月に就任した小川法相は、「大変辛い職務ではあると思うが、職責をしっかりと果たしたい」と死刑執行に積極的な発言をしてきた。これらは民主党の政権公約に反するばかりか、死刑廃止に向かう国際的な潮流にも逆行するものであった。

さらに法務省では2010年8月より2011年11月まで「死刑の在り方についての勉強会」を開催してきたが、小川法相は2012年3月に打ち切りを決め、報告書を公表した。報告書では「死刑制度の存廃に関する主張については、廃止論と存置論で大きく異なっており、そしてそれぞれの論拠については各々の哲学や思想に根ざしたものであり、一概にどちらか一方が正しく、どちらか一方が誤っているとは言い難いものであるように思われる」としながら、他方で、勉強会では死刑冤罪被害者からの意見を聴取しないなど極めて不十分なものであり、敢えて打ち切りを強行したことは、執行準備のための措置であったと言わざるを得ない。

死刑廃止は今や国際的な趨勢である。これまでに国際人権基準の審査において、再三にわたり日本の死刑制度について勧告等を受けており、国連総会も繰り返し死刑廃止を視野に入れた死刑執行停止を求めている。2010年7月以来の死刑執行の事実上の停止状態は国際的に高く評価されていたところであり、今回の死刑執行は国際人権基準から見た日本の評価を失墜させることになった。

監獄人権センターは今回の死刑執行に強く抗議するとともに、死刑執行の停止、そして死刑制度廃止の政策的実現に向け、今後も取り組んでいく決意である。

以 上

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