NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

滝実法務大臣による死刑執行に抗議する

声明・意見書

2012年8月3日
NPO法人監獄人権センター
代表 村 井 敏 邦
事務局長 田鎖麻衣子

  滝実法務大臣は,本日(8月3日)、服部純也氏(東京拘置所)、松村恭造氏(大阪拘置所)の2名に対し、死刑を執行した。今回の執行は滝法相が就任してから僅か2か月足らず、民主党政権下では本年3月29日に続き3度目の執行である。

  死刑廃止が揺るぎない国際的な趨勢となる中で,死刑制度を存置し,かつ執行を行う日本への批判は,年を追うごとに高まっている。これまでにも日本政府は,条約機関による審査において再三にわたり勧告等を受けてきたが、それらの勧告を何一つ受け入れず,死刑制度を維持する姿勢を示してきた。これは,民主党が「政策インデックス2009」において死刑の存廃や当面の執行停止,死刑の告知、執行方法などをも含めて国会内外で幅広く議論を継続していくと宣言し,政権与党となってからも,何ら変わることがない。

  すなわち,2011年末には平岡秀夫法務大臣(当時)のもとで,1992年以来初めて,死刑執行のない年が出現するに至ったが,本年3月には,後任の小川敏夫法務大臣(当時)によって「死刑の在り方についての勉強会」は打ち切られ,その後に開始された死刑執行方法に関する政務三役での検討にいたっては,一切の議論が公開されず秘密にされたままである。これらは、死刑の執行停止や廃止につながり得るあらゆる動きを封じたうえで,定期的な死刑執行状況を作り出すための準備であったと言わざるを得ない。

  さらに,今回執行された2名がなぜ選ばれたのかについても,全く不明である。滝法相は,就任直後の記者会見において,個々の死刑判決について判断をしていくと述べていたが,服部氏は一審で無期懲役判決となり職業裁判官の間ですら死刑の判断が分かれた案件であり,松村氏に至っては控訴取下げにより死刑判決が確定し,国連諸機関から求められている必要的上訴の要請に真っ向から反する事案である。就任から2か月足らずの間に,慎重な検討がなされたとは到底考えられない。法務省は,執行対象の選定過程を含め,過去の死刑執行に関する情報を明らかにしたうえで,すべての死刑の執行を停止し,死刑廃止に向けた検討を開始すべきである。

  監獄人権センターは今回の死刑執行に強く抗議するとともに、死刑執行の停止、そして死刑制度廃止の政策的実現に向け、今後も取り組んでいく決意である。

以上

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