NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

谷垣法務大臣による死刑執行に抗議する

声明・意見書

2013年2月21日
NPO法人監獄人権センター

谷垣禎一法務大臣は、本日(2月21日)、金川真大氏(東京拘置所)、加納恵喜氏(名古屋拘置所),小林薫氏(大阪拘置所)の3名に対し、死刑を執行した。

今回の執行は,自民党政権の復活後初めて,そして谷垣法相の就任から僅か2か月足らずでの執行である。谷垣法相は,昨年12月の就任以来,記者会見において,死刑制度そのものについて肯定的な態度を明らかにしつつ,死刑の執行については,慎重な運用が必要になるという考えを示してきた。しかし,今回の執行からは,法相自身による慎重な検討がなされたとは到底考えられない。

死刑廃止が揺るぎない国際的な趨勢となる中で、死刑制度を存置し、かつ執行を行う日本は、国際社会において年を追うごとに特異な存在となり,孤立を深めつつある。日本政府は、政権交代の前後を通じ,一貫して,条約機関による審査等において再三にわたり死刑執行の停止・廃止および制度運用につき勧告を受けてきたにもかかわらず、それらの勧告を何一つ受け入れず、死刑制度を維持し,執行を継続する姿勢を示してきた。昨年10月31日には,国連人権理事会作業部会において第2回普遍的定期的審査(UPR)が実施され,24か国から死刑制度の廃止や停止等の勧告を受けている。来月開催される人権理事会本会合において結果文書の採択を控えるなかで行われた今回の執行は,自民党政権として,今後,死刑制度に関する議論や情報公開の流れを完全に封じ,定期的に死刑を執行することで死刑確定者数の減少を目指していく姿勢を打ち出したものと言える。

今回の執行は,死刑が存置されている場合であっても,その適用を可能な限り制限しようとする国際人権基準に照らしても,問題が大きい。日本では,拷問禁止委員会や規約人権委員会からの度重なる勧告にもかかわらず,死刑判決に対して上級審に上訴することは義務的とはされていない。金川氏および小林氏は,それぞれ自ら控訴を取り下げて第一審における死刑判決が確定した。また加納氏は,第一審の無期懲役判決に対して,検察官が死刑を求めて控訴した結果,死刑判決が確定するに至っている。死刑の適用は極めて慎重になされているとする政府の見解とは,かけ離れた実態が明らかである。

監獄人権センターは今回の死刑執行に強く抗議するとともに、死刑執行の停止、そして死刑制度廃止の政策的実現に向け、今後も取り組んでいく決意である。

以上

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