NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

谷垣法務大臣による死刑執行に抗議する

声明・意見書

2013年9月12日
NPO法人監獄人権センター

谷垣禎一法務大臣は,本日(9月12日),熊谷徳久氏(東京拘置所,73歳)に対し,死刑を執行した。

今回の執行は,政権交代後の自民党政権における3回目の執行であり,これによって本年,谷垣法相によって執行された人の数は6名に達した。熊谷徳久氏の事件では,殺害された被害者数が1名であり,第一審において無期懲役の判決を受けていた。しかし、検察官上訴により控訴され、控訴審において死刑判決を受けた。今回の執行は,「死刑は最も重大な犯罪に厳格に限定されるべきであ」り,かつ,「高齢者…の執行に関し,より人道的なアプローチをとることを考慮すべきである」とした国連自由権規約委員会による勧告(2008年)に照らしても,問題があると言わざるを得ない。

死刑廃止が揺るぎない国際的な趨勢となる中で,死刑制度を存置し,かつ執行を継続する日本は,国際社会において年を追うごとに特異な存在となり,孤立を深めている。日本政府は,本年3月の国連人権理事会本会合において,普遍的定期的審査における死刑制度の廃止や停止を求める数多くの勧告の受け入れをすべて拒否し,死刑制度の存廃は各国が決すべき問題であって,制度について議論すら行う意思がないとの回答を行った。また5月には,国連拷問禁止委員会による第2回日本政府報告書審査が行われ、死刑廃止の可能性を検討することを含め、死刑確定者の拘禁状況や法的保護手段と保護を与えられることを確実にするよう強く求められた。

しかし,日本政府・法務省は,こうした勧告を一顧だにすることなく,2020年オリンピックの開催都市が東京に決まった直後,約4か月半ぶりとなる死刑の執行を行った。オリンピック憲章は,「オリンピズムの目標は,スポーツを人類の調和のとれた発達に役立てることにあり,その目的は,人間の尊厳保持に重きを置く,平和な社会を推進することにある」としている。日本政府は、死刑制度を存置し,執行を推し進めることは,今日においては、人間の尊厳に重きを置く平和な社会の推進とは相いれなくなっていることを認識するべきだ。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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