NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

谷垣法務大臣による死刑執行に抗議する

声明・意見書

2013年12月12日
NPO法人監獄人権センター

谷垣禎一法務大臣は,本日(12月12日),加賀山領治氏(大阪拘置所,63歳)、藤島光雄氏(東京拘置所、55歳)の2名に対し,死刑を執行した。

今回の執行は,政権交代後の自民党政権における4回目の執行であり,これによって本年,谷垣法相によって執行された人の数は昨年を上回る8名に達した。今回の執行は、法務省による12月10日の世界人権デーに合わせた人権週間の直後であり、日本政府の人権意識が厳しく問われなければならない。

加賀山領治氏は,2012年7月の最高裁による上告棄却から僅か1年4か月余りでの死刑執行だった。死刑確定者は外部交通を著しく制限され,たとえ再審請求等の意思を有していても弁護人を獲得することすら困難な状況におかれている。今回の執行は,事前に執行の告知がない点とともに,死刑確定者の防御権の保障という観点からも大いに問題がある。

また、両事件とも、事件から第一審における死刑判決までの期間が短く、拙速な裁判であった。加賀山領治氏は,事件から約1年、藤島光雄氏は約1年4か月での死刑判決であった。裁判所における審理の不十分さは,藤島氏が過去に少なくとも5回にもわたり再審請求を行っていたことからも窺われる。

死刑廃止が揺るぎない国際的な趨勢となる中で,死刑制度を存置し,かつ執行を継続する日本は,国際社会において年を追うごとに特異な存在となり,孤立を深めている。日本政府は,本年3月の国連人権理事会本会合において,普遍的定期的審査における死刑制度の廃止や停止を求める数多くの勧告の受け入れをすべて拒否した。また、5月には,国連拷問禁止委員会による第2回日本政府報告書審査が行われ、死刑廃止の可能性を検討することを含め、死刑確定者の拘禁状況の改善や,法的保護手段を確実にすることが強く求められた。

本年10月から11月にかけて,自由権規約委員会において,市民的及び政治的権利に関する国際規約に基づく第6回政府報告書審査に向けた日本政府に対する論点リスト(List of Issues)が採択された。2014年7月に予定されている第6回審査は,この論点リストに基づき審査が実施される予定であり,リストでは死刑について17項目にわたり日本政府に対して情報提供を求められている。第6回審査においても日本の死刑制度について厳しい審査と勧告を受けることは必至である。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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