NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

谷垣法務大臣による死刑執行に抗議する

声明・意見書

2014年6月26日
NPO法人監獄人権センター

谷垣禎一法務大臣は,本日(6月26日),川崎政則氏(大阪拘置所,68歳)に対し,死刑を執行した。今回の執行は,2014年に入ってからは初めての執行であるが,第二次安倍政権において,谷垣法務大臣の命令により執行された人の数は9名に達した。

川崎氏は,自己の亡き妻の実姉である女性(当時58歳)と,女性の2人の幼い孫を殺害した事実により死刑を宣告され,2012年7月12日,上告棄却により死刑判決が確定した。弁護人は,川崎氏は知的障害・広汎性発達障害のために行動を制御することが著しく困難であったとして,限定責任能力を主張したが,裁判所は,精神鑑定の結果に基づき,完全責任能力を認めた。最高裁判所も上告棄却判決において,被告人の「知能程度がやや低い」ことを認めているが,これが刑事責任に与えた影響は否定している。

川崎氏の障害の詳細については不明であるものの,国際基準においては,知的障害者に対する死刑が禁じられている。たとえば,国連経済社会理事会の「死刑に直面する者の権利の保護の保障の履行に関する決議」(ESC/RES/1989/64)は,精神遅滞ないし知的能力が著しく限定された人に対する死刑を行わないよう求めている。しかし,我が国では,有責性が類型的に低いと考えられる知的障害者への死刑の適用について,責任能力に関する一般的な基準以外にはなんらの指針も存在しないままである。無実の罪により死刑を科されることが許されないのは論を待たない。しかし,こうした指針の不存在は,本年3月に釈放された袴田巌氏のように明らかな冤罪事例以外であっても,誤った死刑の適用が避けがたいことを示している。

来る7月15日及び16日,国連の規約人権委員会は,第6回目となる日本政府報告書審査を実施する。本日の執行が,日本における死刑の実施状況に関し,委員会による新たな懸念を惹き起こすことは必至である。監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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