NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

上川法務大臣による死刑執行に抗議する

声明・意見書

2015年6月25日
NPO法人監獄人権センター

上川陽子法務大臣は,本日(6月25日),神田司氏(名古屋拘置所)に対し,死刑を執行した。

今回の執行は,上川法務大臣による初の執行である。その対象とされた神田氏は,2009年3月の死刑判決後,自ら控訴を取り下げたが,その後,当該控訴取下げは真意に基づかない無効なものであるとして,私選弁護人を選任し,取下げの効力を争っていた。

わが国には,死刑判決に対する自動上訴制度がない。このため,多くの死刑判決が,上訴審における審理を経ることなく,確定してきた。しかし,死刑判決の誤りは,無実の人を死刑とする場合に限られない。一昨年以来,3件の裁判員裁判による死刑判決が東京高等裁判所によって破棄され,その判断が最高裁判所によって維持された例は,このことを如実に示している。たとえ死刑を刑罰として存置している場合であっても,死刑の適用は極めて例外的な事案に限定されなければというのが,国際人権基準の要求である。それゆえに,国連の条約機関は,繰り返し,日本政府に対し,死刑判決に対する義務的上訴制度の導入を勧告してきた。すなわち自由権規約委員会は上訴審における再審査を義務的とする制度の導入を勧告し(2008年第5回審査総括所見パラ17),拷問禁止委員会も同様の勧告を繰り返している(2007年第1回審査総括所見パラ20,2013年第2回審査総括所見パラ15)。

日本政府は,こうした勧告に対し,義務的上訴制度導入の必要性はないとして,ことごとく拒否してきた。しかし,裁判員裁判による死刑判決の確定が進む中,上訴の取り下げにより裁判員裁判での死刑判決が確定した人々に対する死刑執行は,もはや避けられない。政府は,裁判員制度と世論の支持を根拠に死刑制度維持の責任を市民に押し付けることはやめ,ただちに,義務的上訴制度を早期に導入するとともに、死刑制度全体の見直しを開始すべきである。

監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。

以上

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