金田法務大臣による死刑執行に抗議する
2016年11月11日
NPO法人監獄人権センター
金田勝年法務大臣は,本日(11月11日)田尻賢一氏(福岡拘置所)に対し,死刑を執行した。今回の執行は,本年8月に就任した金田法務大臣による初の執行である。
我々は,昨年6月25日の上川法務大臣、12月18日の岩城法務大臣(いずれも当時)による死刑執行に対し,「裁判員裁判による死刑判決の確定が進む中,上訴の取り下げにより裁判員裁判での死刑判決が確定した人々に対する死刑執行は,もはや避けられない。政府は,裁判員制度と世論の支持を根拠に死刑制度維持の責任を市民に押し付けることはやめ,ただちに,義務的上訴制度を早期に導入するとともに、死刑制度全体の見直しを開始すべきである。」と述べた。この言葉を,再再度ここに繰り返す。
田尻氏は,2011年10月の熊本地裁,2012年4月の福岡高裁・控訴審の死刑判決後,弁護人による上告を自ら取り下げた。田尻氏による上告取下げは,死刑判決に対する自動上訴制度の導入の必要性を改めて強く認識させるものである。わが国には死刑判決に対する自動上訴制がないため,多くの死刑判決が,上訴審における審理を経ることなく確定してきた。しかし,死刑判決の誤りは,無実の人を死刑とする場合に限られない。責任能力に疑問がある場合や,共犯者間の役割等にとどまらず,死刑か無期かの判断が分かれる要素は様々であり,その判断を誤る可能性は常にある。2013年以来,3件の裁判員裁判による死刑判決が東京高等裁判所によって破棄され,その判断が最高裁判所によって維持された例は,このことを如実に示している。それゆえに,国連の国際人権(自由権)規約委員会(2008年第5回審査総括所見パラ17),拷問禁止委員会(2007年第1回審査総括所見パラ20,2013年第2回審査総括所見パラ15)は,繰り返し,日本政府に対し,死刑判決に対する義務的上訴制度の導入を勧告してきた。
本年10月7日,日本弁護士連合会が「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,メディア,一般市民のあいだで死刑存廃についての議論が開始された。日本政府は,死刑制度をめぐる上記を含めた数々の問題点を直視し,制度の廃止をも視野にいれ,直ちに死刑制度自体の見直しを行うべきである。
監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。
以上