金田法務大臣による死刑執行に抗議する
2017年7月13日
NPO法人監獄人権センター
金田勝年法務大臣は,本日(7月13日)西川正勝氏(大阪拘置所),住田紘一氏(広島拘置所)に対し,死刑を執行した。今回の執行は,昨年8月に就任した金田法務大臣による2回目の執行であり、第二次安倍政権以降に死刑が執行された人の数は19人となった。
住田氏は,2013年2月の岡山地裁で裁判員裁判による死刑判決後,翌月に自ら控訴を取り下げた。これは、裁判員裁判による死刑判決の確定が進む中,2015年12月に執行された津田寿美年氏に対する執行に始まり、上訴の取り下げにより裁判員裁判での死刑判決が確定した人々に対しても死刑執行を断固として進めていくという意思を、法務省が明確化したものである。政府は,裁判員制度と世論の支持を根拠に死刑制度維持の責任を市民に押し付けることはやめ,ただちに,義務的上訴制度を早期に導入するとともに、死刑制度全体の見直しを開始すべきである。
さらに、住田氏による控訴取下げは,死刑判決に対する自動上訴制度の導入の必要性を改めて強く認識させるものである。わが国には死刑判決に対する自動上訴制がないため,多くの死刑判決が,上訴審における審理を経ることなく確定してきた。しかし,死刑判決の誤りは,無実の人を死刑とする場合に限られない。責任能力に疑問がある場合や,共犯者間の役割等にとどまらず,死刑か無期かの判断が分かれる要素は様々であり,その判断を誤る可能性は常にある。2013年以来,3件の裁判員裁判による死刑判決が東京高等裁判所によって破棄され,その判断が最高裁判所によって維持された例は,このことを如実に示している。それゆえに,国連の国際人権(自由権)規約委員会(2008年第5回審査総括所見パラ17),拷問禁止委員会(2007年第1回審査総括所見パラ20,2013年第2回審査総括所見パラ15)は,繰り返し,日本政府に対し,死刑判決に対する義務的上訴制度の導入を勧告してきた。
また西川氏は,事件の審理において強盗殺人を否認、強盗殺人未遂については殺意を否認していた。そのため,被告人の否認主張を踏まえての徹底した事実審理は行われていないまま,死刑が確定している。しかも、報道等によれば、西川氏は再審請求中であったとのことであり、事実であるとすれば、再審請求中の死刑確定者に対する執行は、1999年12月の小野照男氏に対する執行以来である。かねてより法務省は、再審請求中であっても同じ理由で再審請求を繰り返している場合には、執行が正当化されるとの見解をしめしてきた。しかし、日本で初めて死刑確定者として再審無罪判決を得た免田栄氏は、第6次再審まで、無実の主張を繰り返したのである。確定判決に対する再審請求が現に裁判所に係属しているにもかかわらず、政府が死刑を執行することは許されない。再審請求中の死刑執行を禁止する明文規定の新設が急務である。
日本政府は,死刑制度をめぐる上記を含めた数々の問題点を直視し,制度の廃止をも視野にいれ,直ちに死刑制度自体の見直しを行うべきである。監獄人権センターは,今回の死刑執行に強く抗議するとともに,死刑執行の停止,そして死刑制度廃止の政策的実現に向け,今後も取り組んでいく決意である。
以上