NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

上川法務大臣による死刑執行に抗議する

声明・意見書

2018年7月6日
NPO法人監獄人権センター

本日、上川陽子法務大臣の命令により、オウム真理教の元幹部である松本智津夫、早川紀代秀、井上嘉浩、新實智光、土谷正実、中川智正、遠藤誠一の各氏、計7名の死刑確定者に対する死刑が執行された。監獄人権センターは、あらゆる死刑の執行に反対するものであるが、とりわけ今回の執行の大きな問題性をここに告発する。

第一に、松本氏に対する死刑執行は、刑事訴訟法に違反している可能性が極めて高い。同法479条1項は、「死刑の言渡しを受けた者が心身喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によって執行を停止する。」と規定する。日本弁護士連合会(日弁連)は、一般市民からの人権救済申立事件について調査を行った上、本年6月15日付けで、8名の死刑確定者が同条の心神喪失の状態に該当し、又はその疑いがあるので、死刑の執行を停止するよう、上川大臣に勧告した。日弁連はこの8名の氏名を明らかにしていないが、申立人によれば、この8名の中には松本智津夫氏が含まれている。その他の信頼できる情報とも照合し、我々は、松本氏が重篤な拘禁反応により心神喪失の状態に在ったと確信する。松本氏に対する死刑執行は、やはり心神喪失が強く疑われながら2007年12月に執行された藤間静波氏の事案以来の暴挙である。

第二に、報道等によれば、本日執行された7名のうち6名は、本日現在、再審請求中であった。再審請求中の執行は、係属中の事件について司法判断を受ける死刑確定者の権利と、判断を行う司法の権限をともに否定するものである。国連の自由権規約委員会をはじめとする条約機関も、日本政府に対し、再審請求中の執行を行わないよう繰り返し勧告してきた。法務省は、2017年にも、3名の死刑確定者に対し、再審請求中としては1999年以来初めてとなる執行を行ったが、それが本日の執行のための布石であったことが明らかとなった。

上川大臣は常日頃、「誰一人取り残さない社会」を実現すると公言する。しかし、今回、明らかとなったのは、2019年に予定されている即位の礼、2020年の東京オリンピック・パラリンピックと、国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)を前に、なんとしてでも2018年中にオウム真理教関連確定者を執行するという、法相そして日本政府の強固な決意である。同時に、今後も、残る6名のオウム真理教元幹部の死刑確定者をはじめ、死刑を執行することで、死刑確定者は誰一人残さず社会から完全に排除するという宣言である。

しかし、我々は、すべての人間の尊厳が尊重される社会を目指す。死刑制度の廃止と、それに向けた死刑執行の停止に向け、今後もあらゆる可能な努力を続けていく決意である。

以上

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