NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

上川法務大臣による大量死刑執行に強く抗議する

声明・意見書

2018年7月26日
NPO法人監獄人権センター
日本冤罪・死刑情報センター

本日、上川陽子法務大臣の命令により、オウム真理教の元幹部である岡崎(旧姓宮前)一明氏(名古屋拘置所)、横山真人氏(名古屋拘置所)、端本悟氏(東京拘置所)、小池(旧姓林)泰男氏(仙台拘置支所)、豊田亨氏(東京拘置所)、広瀬健一氏(東京拘置所)の合計6名の死刑確定者に対する死刑が執行された。監獄人権センターは、あらゆる死刑の執行に反対するものであるが、とりわけ、今回の執行により法務省は3週間足らずの間に合計13名もの多数者に死刑を執行したものであり、その前例をみない問題の重大性をここに告発する。

7月6日にオウム真理教元幹部7名に対する死刑が執行されて以降、世界中から執行を非難し、かつ、新たな執行を行わないよう求める多くの声が、日本政府に寄せられてきた。当センターも、世界死刑廃止連盟(WCADP)、国際人権連盟(FIDH)等の国例人権団体と連携し、残る6名の元オウム真理教幹部死刑確定者に対する執行が行われないよう、働きかけを強めてきた。そのなかでも強調してきたように、本日執行された6名のうち横山真人氏、小池泰男氏、豊田亨氏、広瀬健一氏の4名は、再審請求中であった。再審請求中の執行は、係属中の事件について司法判断を受ける死刑確定者の権利と、判断を行う裁判所の権限をともに否定するものである。国連の自由権規約委員会をはじめとする条約機関も、日本政府に対し、再審請求中の執行を行わないよう繰り返し勧告してきた。さらに、本年3月、国連人権高等弁務官事務所の報道官は、オウム真理教事件の死刑確定者13人について、再審請求中にもかかわらず死刑が執行された場合は、死刑に直面する者の権利保護を定めた国連基準に違反するとの認識を示していた。

また、再審請求以外の文脈においても、国内の各方面から死刑の執行を行わないよう求める声が広がっていた。研究者や弁護士らでつくる「日本脱カルト協会」や、オウム真理教の元信者の家族(事件の被害者を含む)による団体などから、今後、同種事件の再発防止のためにも、事件関係者による真相究明を追求すべきであり、とりわけ松本智津夫死刑確定者を除く12人については、死刑の執行を執行しないよう訴えていた。

今回の執行により、上川陽子法務大臣は、前回の法相在任中(2014年10月~2015年10月)を含め、計16人の執行を命じたことになる。1993年に執行が再開されて以降、一人の法務大臣による死刑執行命令数としては、鳩山邦夫法務大臣の13名を超え最多となった。上川大臣は常日頃、「誰一人取り残さない社会」を実現すると公言しながら、2019年に予定されている即位の礼、2020年の東京オリンピック・パラリンピックと、国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)を前に、オウム真理教関連確定者全員の大量処刑を敢行したのである。

韓国では19977年12月30日に23人が同時に死刑執行されたのを最後に、死刑の執行が停止されて現在に至っている。我々は、政府・法務省に対して、国際社会に背を向け続け死刑執行を繰り返す異常な行為を直ちにやめ、今回の死刑執行を最後として、死刑の執行の停止と死刑廃止に向けた具体的な検討を直ちに開始するよう強く求める。

以上

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