NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

山下法務大臣による死刑執行に抗議する

声明・意見書

2018年12月27日
NPO法人監獄人権センター
日本冤罪・死刑情報センター

本日、山下貴司法務大臣の命令により、岡本啓三(旧姓河村)氏、末森博也氏の2名に対して死刑が執行された。監獄人権センターは、この死刑執行に強く抗議する。

2018年ほど、日本の死刑制度、のみならず日本の刑事司法制度のあり方が、国際社会の注目を浴びた年はない。本年7月にはオウム真理教幹部ら13名に対する大量死刑執行が世界を震撼させた。11月のカルロス・ゴーン氏らの逮捕・勾留を契機に、「人質司法」と揶揄されてきた被疑者の身体拘束と取調べの在り方が、大きな批判を浴びている。そして本日、2名に対する死刑が執行され、本年の死刑執行は15名と、2008年以来の多数に上った。2名のうち岡本氏は再審請求中であったとも伝えられている。「刑の執行停止,再審事由の有無等について慎重に検討し,これらの事由等がないと認めた場合に初めて死刑執行命令を発することとしている」という法務省の説明とは裏腹に、2019年に予定されている即位の礼、2020年の東京オリンピック・パラリンピックと国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)を前にできるだけ多くの死刑を2018年中に執行すべく、15名の死刑を敢行したことは明らかである。

折しも12月17日、国連総会では、死刑執行モラトリアムに関する決議が、121か国という圧倒的多数の賛成により、可決された(反対35か国、棄権32か国)。初めて賛成票を投じた国の中には、本年10月に政府が死刑廃止の意思を表明したマレーシアが含まれている。本日の臨時記者会見において山下貴司法務大臣は、死刑制度が「わが国の刑事司法制度の根幹にかかわる重要な問題」であると繰り返し、今後も死刑制度を維持し、執行を継続していくという政府の強い意思を表明した。日本政府は、国際社会の声に一切耳を傾けず、対話すら拒否し、かたくなに死刑の執行を継続することこそが「正義の実現」であるとの誤った考えから、解き放たれねばならない。

我々は、度重なる死刑執行にも決して屈せず、国際社会と連帯し、今後も日本政府・法務省に対し、死刑の執行の停止と死刑廃止に向けた具体的な検討を直ちに開始するよう粘り強く求めていくことを決意する。

以上

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