NPO法人監獄人権センター

STATEMENT声明・意見書

日本:カルロス・ゴーン氏の訴追が明らかにする刑事司法制度の欠陥

声明・意見書

2019年2月20日
国際人権連盟(FIDH)
監獄人権センター(FIDH加盟団体)

パリ、東京―2019年2月20日:「日本政府は、日本の刑事司法制度が国際人権基準に従うよう、制度にある深刻な欠陥に対処するための具体的な手段を直ちに講じなければならない」、国際人権連盟(International Federation of Human Rights, FIDH)とその加盟団体である監獄人権センター(CPR)は本日、こう述べた。

“日産自動車の前会長カルロス・ゴーン氏の逮捕・勾留により、ついに国際社会は、日本の刑事司法制度の問題に関心を示すようになった。取調べ中に弁護人の援助を受ける権利の否定、起訴前の長期勾留、そして刑事施設における拘禁状況は、日本の刑事司法制度を非常に長期にわたって特徴づけてきた深刻な問題の一部を明らかにしている”、と監獄人権センターの田鎖麻衣子事務局長は述べる。

日本の刑事司法制度は、すでに過去数十年にわたり、国際機関および人権組織による深刻な懸念の対象となっていた。2014年8月には、国連規約人権委員会が、日本政府は代用監獄(代用刑事施設)制度を廃止し、起訴前保釈のような勾留代替措置や、取調べにおいて弁護人の援助を受ける権利を保障するよう勧告した。2013年には、国連拷問禁止委員会が、日本の司法制度における、被告人の自白(しばしば弁護人のいない状態でなされる)の結果として得られた証拠への過度の依存に懸念を示した。また拷問禁止委員会は、日本は、“マンデラ・ルールズ”として知られる国連被拘禁者処遇最低基準規則に合致させるべく、拘禁条件を改善するよう勧告した。規約人権委員会は1998年に“被収容者の基本的権利を制限する厳しい所内行動規則”への懸念を表明していたが、被収容者はいまだに、人間の尊厳に対する尊重とは相いれない、不合理に制限的な所内規則のもとに置かれている。したがって、こうした規則は、日本が批准する国際人権(自由権)規約の下における日本の義務と一致していない。

このような懸念は、日本政府が、拷問禁止委員会および規約人権委員会に対して定期報告書を提出していない―提出期限は各々2017年5月31日及び2018年7月31日―という事実によって、深刻化している。

“刑事司法制度の徹底的な見直しに向けた最初の措置として、主要な国連人権機関との誠実かつ建設的な対話を行うべきである。日本政府は、関連する国際文書のもとにおける義務にしたがい、期限を徒過した報告書を国連人権機関に提出すべきである”、とFIDHの副代表アディル・ラーマン・カーンは述べた。

日本の当局は、2018年11月19日、ゴーン氏を、日産自動車の最高経営責任者として受けた2010年度から2014年度までの収入を過少申告した疑いで逮捕した。同年12月10日、彼は2015年度から2017年度までの収入の過少申告という新たな嫌疑に見舞われ、さらに、12月21日には2008年に1600万米ドル以上の私的損失を日産に付け替えた疑いで逮捕された。

日本法のもと、裁判所は検察官による逮捕後の被疑者の勾留請求を、起訴まで最長で20日、認めることができる。このプロセスは、別の嫌疑がかけられれば、ゴーン氏の事案のように繰り返すことができる。起訴後は、裁判所が保釈を許可し、あるいは勾留の更新を行わない限り―これらはいずれも、被告人が起訴事実を否認している場合には起こりにくい―勾留が継続される。他のすべての被疑者と同様、ゴーン氏は取調べを受ける際に弁護人の同席を認められず、また、起訴前の保釈の機会もなかった。

以上

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