鈴木馨祐法務大臣による死刑執行に抗議する
2025年6月27日
NPO法人監獄人権センター
本日、鈴木馨祐法務大臣の命令により、白石隆浩氏(東京拘置所)に対する死刑が執行された。監獄人権センターは、この死刑執行に強く抗議する。
本日の死刑執行は、2022年7月26日以来2年11カ月後であり、石破政権において、また鈴木馨祐法務大臣が行った始めての執行であるが、死刑制度が人権問題であることを否定する石破政権の姿勢を如実に示すものである。
また、今回の死刑執行は、法務大臣が諮問する法制審議会において、再審請求中の死刑執行の問題を含めた「再審制度」のあり方が見直されようとしている最中の執行であり、断じて看過できない。
鈴木大臣は、本日の死刑執行後の臨時記者会見で、記者からの「白石隆浩氏が再審請求中であったかどうか」との質問に対して回答を拒否し、複数の記者から抗議の声が上がった。また、被害者等通知制度に基づく「被害者の親族等に対する死刑執行の通知」に関する質問についても、被害者親族等に対する通知の内容のみならず、通知の有無についても回答しなかった。
死刑執行の判断や死刑の存廃に関して鈴木大臣は、「国民感情」や「世論」に基づいて検討し判断していると繰り返し述べたが、国民に対して公開するべき基本的な情報を隠匿する根拠はなく、法務大臣は死刑の執行を命令する立場として説明責任を果たしていない。
2022年11月に公表された自由権規約委員会の第7回政府報告書審査に基づく総括所見において、委員会は「死刑事件における必要的な控訴制度が欠如していること」を指摘し、「死刑囚の再審請求や恩赦に執行停止効を持たせ、死刑囚の精神的健康状態を独立したメカニズムで審査し、(中略)死刑事件についての必要的で効果的な再審査のシステムを確立すること。」を求めている。
本件については、殺人についての「承諾の有無」「責任能力の有無」について争いがあり、弁護人が控訴したにもかかわらず、本人の取り下げによって確定するという経緯があった。自由権規約委員会が指摘する必要的な控訴制度によって事件が再審査されていれば、一審の死刑判決が見直された可能性がある。
また、2024年9月には、国連人権理事会に任命された「特別報告者」が日本政府に対し、日本の死刑の執行方法に懸念を示し、死刑の執行停止の検討を求める書簡を送付した。これに対して同年11月、日本政府は、「絞首」による死刑執行が刑法で定められていること、国民世論の多数が死刑制度を支持していることを理由に、反論の見解を示した。
法務省は、2021年3月に京都で開催された国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)の成果を様々な機会に自賛しているが、京都コングレスで採択された成果文書「京都宣言」では、「更生と社会復帰を通じた再犯防止」、具体的には「加害者の社会復帰を促進するためにコミュニティにおける更生環境を推進する」事が宣言されている。死刑制度は言うまでもなく、罪を犯した者の更生と社会復帰の可能性を奪うものであり、死刑の執行は日本政府が招請したコングレスで採択された「京都宣言」の理念に反している。
日本政府は、国連加盟国および国際社会による京都宣言の実施に向けて、リーダーシップを発揮する立場であるはずだ。
刑法改正により、本年6月より「拘禁刑」が開始された。法務省は拘禁刑については「懲らしめから立ち直りへ」と強調しながらも、死刑確定者には立ち直りや更生の機会を与えず、社会から排除したのである。
我々は、度重なる死刑執行にも決して屈せず、これまで以上に国際社会と連帯し、日本政府・法務省に対して死刑の執行の停止と死刑廃止に向けた具体的な検討を直ちに開始するよう、粘り強く求めていくことを改めて決意する。
以 上