2022年7月26日
NPO法人監獄人権センター
本日、古川禎久法務大臣の命令により、加藤智大氏(東京拘置所)に対する死刑が執行された。監獄人権センターは、この死刑執行に強く抗議する。
本日の死刑執行は、2021年12月21日以来、岸田政権において、また古川禎久法務大臣が行った2回目の執行であるが、死刑制度が人権問題であることを否定する岸田政権の姿勢を如実に示すものである。
去る7月8日、安倍晋三元総理が銃殺され、日本政府は本年9月に「国葬」を執り行うと発表したばかりである。そのような時期であるならば尚更、政府は生命の大切さについて、改めて国民とともに考え、共有するべきではなかったのか。
昨年3月に京都で開催された国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)で採択された成果文書「京都宣言」では、「更生と社会復帰を通じた再犯防止」、具体的には「加害者の社会復帰を促進するためにコミュニティにおける更生環境を推進する」事が宣言されている。
死刑制度は言うまでもなく、罪を犯した者の更生と社会復帰の可能性を奪うものであり、死刑の執行は日本政府が招請したコングレスで採択された「京都宣言」の理念に反している。
古川大臣は、本日の死刑執行後の臨時記者会見で、記者からの「加藤智大氏が再審請求中であったかどうか」との質問に対して回答を拒否した。また、被害者等通知制度に基づく「被害者の親族等に対する死刑執行の通知」に関する質問についても、被害者親族等に対する通知の内容のみならず、通知の有無についても回答しなかった。
死刑執行の判断や死刑の存廃に関して古川大臣は、「国民感情」や「世論」に基づいて検討し判断していると繰り返し述べたが、国民に対して公開するべき基本的な情報を隠匿する根拠はなく、法務大臣は死刑の執行を命令する立場として説明責任を果たしていない。
また、国連の自由権規約委員会をはじめとする条約機関は日本政府に対し、再審請求中の執行を行わないよう繰り返し勧告してきたのである。日本政府は、国連加盟国および国際社会による京都宣言の実施に向けて、リーダーシップを発揮する立場であるはずだ。
さらに本日、林芳正外務大臣は、ミャンマー軍政が行った民主化活動家への死刑執行に対して、EU上級代表およびオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、英国、米国の外務大臣と共に、死刑執行を非難し、暴力ではなく対話を通じて平和を追求するよう求める共同声明を発出した。
他国の死刑執行への非難を表明したまさに当日に、日本政府は死刑を執行したのである。
アメリカではバイデン政権によって、連邦レベルでの死刑の執行は停止されている。日本政府による死刑執行は、死刑廃止に向かう世界的な潮流に対して真正面から挑戦したものである。
我々は、度重なる死刑執行にも決して屈せず、これまで以上に国際社会と連帯し、日本政府・法務省に対して死刑の執行の停止と死刑廃止に向けた具体的な検討を直ちに開始するよう、粘り強く求めていくことを改めて決意する。
以上