女性受刑者に対する終身刑~終身刑がもたらすジェンダー特有の影響~
イギリスにおけるある研究によると、終身刑を宣告された女性は男性受刑者と比較してはるかに限られたネットワークしか維持できず、女性の場合、犯罪の後すぐに家族や知人が関係を断絶してしまうと報告されている。特に、親のような存在との関係や兄弟、親密なパートナーなど、過去に女性が虐待の被害を受けたことのある者との関係については、女性の受刑者自ら断絶してしまうこともある。大部分の女性受刑者はドメスティック・バイオレンスの被害を経験しているが、このこともジェンダーの文脈に関連している。
同様に、女性の受刑者は子どもとの関係が悪化していることにも言及する。というのも、子どもとの連絡を取り続けることはより辛く困難であるからである。女性の受刑者は不釣り合いに高い確率で心の健康に関する問題を示しており、このことは終身刑に服役することでより悪化する。
終身刑受刑者はより多くのスティグマに直面し、自己の受刑が子どもに与える影響によって不釣り合いに影響されるためである。女性の終身刑受刑者は男性受刑者と比較して6倍近く高い確率で自傷行為や自殺未遂に及んでいたことが、研究により明らかとなっている
「終身刑:政策提言」(2018年)より世界の刑務所事情や国際的なGAP
拘禁刑とは、受刑者を刑務所に入れ、その自由を奪うということを意味しますが、自由を奪うというそのこと自体が、とても大きな苦痛をもたらします。拘禁刑は、それ以上の苦痛を加えること(=懲らしめ)を目的とするものではありません。
それだけではなく、自由を奪われることによって、受刑者は、社会との関係を断たれてしまいがちです。もともと、家族や地域のなかで良好な人間関係を結べていなかった人たちが、ただ刑務所に閉じ込められていたとすれば、たとえ定められた刑期を終えても、ほんとうの意味で社会に復帰していくことは、難しくなるばかりです。
ですから、刑務所では、それぞれの受刑者が抱えている問題点を克服し、社会復帰に役立つプログラム提供し、彼らの社会復帰を助ける必要があるのです。
そのため、ヨーロッパでは
一般的に、受刑者の社会復帰のためのコースが日本と比べて格段に充実しています。NGOのスタッフが刑務所の中にオフィスを構えてサービスを提供したりしています。また、施設外とのコンタクトをとることはとても重要なので、面会や手紙のほか、電話による通信もごく普通のことです。
日本のように、家族や友人との面会に原則として職員が立ち会うようなことは、ありません。通常は、広い面会スペースに何組ものグループが面会ができるようにテーブルが並び、職員はその様子を少し離れた所から監視するだけです。また、施設内の生活が、出所後の社会での生活とかけ離れたものとならないよう、居室に持てる物品も日本と比べるとはるかに幅広く自由ですし、事細かく規則で行動が規制されることもありません。
受刑者の自主性を奪い、規則でがんじがらめにすることは、施設に収容されている間の「事なかれ主義」には好都合かもしれませんが、将来の社会復帰を考えると、決して受刑者本人のためになることではありません。
フィンランドのスオメンリンナ開放刑務所
高い塀はなく、訪問時は門さえ閉められていなかった。それでも受刑者が施設外に出るときは、所定の手続きを経なければならないため、こうした緩やかなセキュリティが、彼らに対する心理的機制として働いている。
フィンランドのスオメンリンナ開放刑務所
開放刑務所のサウナ
居室の様子